雪のとなりに、春。
ごくりと唾を飲み込む私と環くん。


「人の家の前で何してるんですか、先輩たち」

「わあっ!?」

「うわっ!?」


すぐ後ろから、雪杜くんの声がして。
驚いて雪杜くんに飛び込んでしまった。
とっさのことなのに相変わらず私を受け止めてくれるし、久しぶりに感じるぬくもりにほっとする。


「花暖先輩」


しかし、声はいつものよりずっとずっと低くて、それで名前を呼ばれるものだからびくりと肩を揺らした。


「あ、あの……」

「説明、してくれるよね?」


恐る恐る顔を上げると、少しだけ口角をあげて圧たっぷりめにそう言われる。
試しに「え、えへ?」と笑ってみてもズモズモしたそれは変わらなかったので、大人しく頷くしかなかった。


「待て奈冷、話せば分かる」

「そうだぞユキメ後輩、大人しくカノを解放するんだ」

「先輩たちも何言ってるんですか。とりあえずここじゃアレなんで、上がってください」


体を離されたと思ったら、きゅっと手を握られる。
確実に不機嫌なはずなのに、繋ぐ力は優しいからきゅんと胸が鳴った。

うう、今すぐ抱きつきたい。

こんな時でさえこんなことを思ってしまう彼女でごめんなさい。

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