雪のとなりに、春。
「奏雨に会いたかったからって理由じゃ足りない?」

「は、はあっ!? なに言ってるのよ、だいたいあなたも小日向花暖のことが好きなくせに!!」


目の前のこの人は、きょとんとした表情をしたあと、噴き出して笑った。

なにがおかしいのよ。本当のことじゃない。
そんなセリフでどうにかなる女じゃないのよわたしは。


「カノはただの幼なじみで、別に奏雨が思ってるような特別な感情はないから」

「し、信じないわよ、そんなの」

「なあ奏雨」

「……っ」


わざとらしく何度も名前を呼ばないでよ。
なんでそんなに優しく笑うのよ。

わたしは奈冷が好きだって何度も伝えてるじゃない。

それともなに?
こういうことを他の女子にもしてるっていうの?


「俺の作品になる気ない?」

「何度も言わせないで!! ならないって言ってるでしょ!?」

「そろそろ家おいでよ奏雨。一緒に絵でも描こうぜ」


いっ、家!?

この男、今わたしのこと家に来るように誘ったわよ!?


とんでもない男ね……奈冷とは大違いだわ……!!
まさか、この強引な手口で何人もの女子を無理矢理……!?


「そっ、その手には乗らないわよ!? わたしを他の女子と一緒にされちゃ困るわ!!」

「なんかすんごい誤解されてる気がするけど、俺はただ奏雨に作品になってほしいだけですよ?」

「何度言われてもなる気はないわ!! 早くわたしから離れてよ!!」


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