雪のとなりに、春。
限界が近いのを悟られたくないのに、そんな気持ちとは裏腹に声が大きくなる。
教室で大きな声を出すなんて初めてだ。
ああ、また変な目で見られてしまう。
最悪だわ、この男。


「奏雨って実は反抗期?」

「だ……っれが、反抗期よ!!」


何かに満足したようにフッと微笑んだこの男は、すくっと立ち上がった。


「昼休みも終わるし、俺もう行くね?」

「できれば二度と来ないで」

「一緒に帰ろうね奏雨」

「帰るわけないでしょバカッ!!」


全然人の話を聞いてないこの男は、「待ってるね~」とひらひら手を振って、やっと教室を出て行ってくれた。

真っ赤になって熱を帯びる顔を隠すように、すぐさま机に突っ伏す。

なによなによあの男!!
人を小馬鹿にするみたいな態度のくせに、時折優しく微笑むなんて。
全然人の話は聞いてくれないし、飄々としていて何を考えているか全然わからない!!

男子ってみんなああいう生物なの!?

少なくともお兄ちゃんや奈冷はあんな人間じゃなかった。

もっと大人で、落ち着いていて、それでいて内に熱いものを秘めていてとてもかっこいい存在。

そんな奈冷を見て、私は人生で初めて恋に落ちたんだ。


目を閉じても奈冷の姿が浮かぶし、イヤホンで音楽を聴いても奈冷の声が聞こえてくる。

……それがどうだ。

どうして今、私の頭の中を支配しているのがあの男なんだ。

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