雪のとなりに、春。
失礼で、むかつく男なのに。

いつもならさらっと流せるようなことも、あの男の前だとバカみたいに全て真に受けては声を荒げてしまう。

現に先ほども完全に思考停止してしまっていたし、言葉だって勝手に口から飛び出ていた。


「なんなのよ……出てってよ……」


頭の中から出て行ってよ。
もうこれ以上わたしにかまわないでよ。

そっちの方が楽に決まってるのに。

わたしも、安易に近づかないように気を付けなくては。


改めてそう思ったのに、午後の授業でもあの男がわたしの脳内を占領してなかなか集中することができなかった。

長い時間を終えてやっと放課後。

わたしは生徒玄関でローファーを落としそうになった。


「……何でいるのよ」

「一緒に帰ろうって言ったじゃん」

「断ったでしょ!?」


ああもう。
なんで冷静になれないんだろう。

何もかも初めてのことでどうしたらいいのかわからない。
ただただコントロールできない自分の感情に戸惑うだけ。


「……色相環。あなたなんでそんなにわたしにこだわるわけ?」

「何度も言ってるだろ? 俺の作品になってほしいんですって」

「作品にって、意味が分からないわよ。それにわたしなんかよりずっと適した人間がいるでしょう」


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