雪のとなりに、春。
1人で過ごすには寂しく感じてしまいそうなくらい広いリビングに通される。

大人しく正座で待機している私たちの前に、紅茶が並べられていった。
不機嫌そうなのは変わらない声音で「どうぞ」と一言添えられる。

チョコレートのいい香りがふわっと広がって、初めてお邪魔した日のことを思い出した。
懐かしいな。みんなで勉強会をするために集まったんだよね。

私は忘れてたけど、その日はちょうど私の誕生日と重なっていて。
でも雪杜くんはきちんと覚えていてくれて、プレゼントまでもらっちゃって。

あの日もらったぬいぐるみは大切に枕元に置いている。


「本当に、3人して何してたんですか。トーガ先輩なんて家真逆なのに」


呆れたようにため息をつく姿もかっこよくてつい見惚れてしまう。
やっぱり今日もかっこいいな。
久しぶりに雪杜くんの家に入れてもらえて嬉しいな。

にこにこしてしまっている私とは相反して、両隣に座る環くんと信濃くんは親に反抗する子供のように眉間にシワを寄せていた。


「だって奈冷がおかしいから」

「だってユキメ後輩が変だから」

「……もう少し具体的に話してもらっていいですか。あと……」


ふと雪杜くんと視線がぶつかる。


「花暖先輩はなんでにこにこしてんの。俺、怒ってるんだけど」

「あ、いや、やっと雪杜くんの家に入れてもらえて嬉しくてつい……」

「はあ?」


ジト目で見られて、「ゴメンナサイ」と小さく呟いた。

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