雪のとなりに、春。
なんて言えばいいの?
友達?

説明の仕方がわからずあたふたしていると色相環がこてんと首を傾げて、それから手の平を上にしてわたしに伸ばしてくる。


「えっと、ちょっと泊めてくれる人に代わるね」


一言告げて、色相環にスマホを渡した。


「もしもし、奏雨さんと同じ高校に通っています、色相環です」


背筋をピンと伸ばして、自信に満ちた表情で、あのお母さんに臆することなく話をしてくれる。
すごく堂々と経緯を説明している彼を見て、わたしとは大違いだと勝手に落ち込みそうになる。


「……いえ、ありがとうございます。はい、失礼します」


何もない空間に対してぺこりと頭を下げて、通話を終了した。
それからニッと笑ってスマホを返してくる。


「奏雨のお母さん、全然悪い人じゃないじゃん」

「……そう」


そんなこと、小さい頃からずっと分かっている。
誰よりも世間体を気にする母は、外面だけは「いいお母さん」なのだ。


「じゃあ今夜は描きまくるぞ。付き合えよ? 奏雨」

「いやよ、さすがに勉強しなくちゃ」

「なら俺が奏雨の勉強を見てやろう」

「は? あなたがわたしに?」


絵具に囲まれている彼に、勉強ができるとはとても思えない。
失礼なこととはわかっていても、とても信じられなくて彼をじっと見つめてしまう。

< 161 / 246 >

この作品をシェア

pagetop