雪のとなりに、春。
「……わたし、3年の範囲予習してるけど、きっとあなたよりは色々わかってるつもりよ?」

「お前もかよ。どうなってんだ雪杜家……」


なぜか片手で後頭部をくしゃっとして、ため息をこぼされた。


「……? 受験のことを考えたら前倒しで勉強するのなんて普通でしょう?」

「うわ、去年も同じようなセリフ聞いたわ」


左手で絵具のついたナイフを拾い上げて、またもニッと笑う色相環。
まさか、まだ描くつもりなんじゃ……。


「ま、続き描きますか」

「勉強は!?」

「知ってるか奏雨、夜は長いんだぜ?」

「な、はあ?」

「俺が夜の過ごし方教えてやるよ!!」


子供のように目を輝かせるから、強く文句を言えなくて。

彼に流されるままキャンバスと向き合い続ける。

不思議と眠気に襲われることはなくて
ただ色を重ねることがこんなにも楽しくて
気付けば夢中になって色を楽しんでいた。


結局その日、わたしは。

はじめて「勉強をしない放課後」を過ごした。
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