雪のとなりに、春。
「……」


なんだか、天気みたいな人だったなあ……。
ころころ人が変わるし、もしかして多重人格なんじゃ……?

それに、今日の事故であのあたりは通行止めになってるはずだけど、どうやって帰るんだろう。

……まあ、皐月さんなら大丈夫か。


「はっ!! そうじゃない、雪杜くん!!」


自分にとって1番大切な存在のことを思い出して、雪杜くんの部屋へ急いで向かう。
起こすと悪いので、なるべくゆっくりドアを開けた。


「……お、お邪魔します……!!」


小声で声をかけて中に入ると、苦しそうに顔を歪ませた雪杜くんが真っ先に目に飛び込んできた。

傍に寄って手を握る。
いつも感じるよりずっとずっと熱い。

リビングでジュースなんか飲んでる場合じゃなかった。
こんなに、好きな人が苦しんでいるというのに。

どうしよう、死にたくなってきた……。

ひとりで浮かれて、落ち込んで、出しゃばって。
私、全然雪杜くんのこと見えてなかったんだ。

じわりと涙がにじむけど、我慢。


「……ん」


雪杜くんの瞼にぎゅっと力が入れられたあと、ゆっくりと綺麗な瞳が姿を現した。
お、起こしちゃったかもしれない。

我慢しきれず溢れそうな涙を乱暴に拭って、雪杜くんに声をかける。


「雪杜くん」

「…………」


潤んだ瞳の焦点は、どこにも結ばれていない。

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