雪のとなりに、春。
そして、やっと私を見つけてくれた。


「……かの、先輩……?」

「雪杜くん、あの、体冷やすものあるかな……? ごめんね私、どうしたらいいのか分からないけど、多分冷やした方がいいんだよね?」


私の言葉を聞いた雪杜くんが、重たそうな体をむくりと起こす。


「あったとおもう……」

「い、いいよ、雪杜くんは寝てて?」

「……」


少しの沈黙の後、こてんと私の肩に頭を乗せてきた。
雪杜くん、すごくつらそう……。
触れていなくても熱気が伝わってきていたのに、肩がとても熱い。

雪杜くんは私の腕をつかんで、頭を上げる。
伏し目がちに私を見つめて何度か深呼吸した。


「先輩に、うつしたくない。帰って」

「……ゆ、雪杜くんのならいいもん!!」

「大きい声出さないで」

「ご、ごめんね……?」


苦しそうに目を閉じて、はあー……と深いため息をついた雪杜くんは今度は大きく息を吸い込んで、もう一度私を見る。


「あのさ、受験生でしょ。もう少し自覚してくれる。こんなことしてる場合じゃないでしょ。早く帰って。今日くらい休んでいいとは言ったけど、いくらなんでも気を抜きすぎ。俺はこういうの慣れてるし、先輩に何かしてもらわなくたって寝てれば治るの。だから先輩はすぐに帰って。何度も言うけど君はもう少し受験生としての自覚を……」

「雪杜くん!?」


まくし立てるように正論を突きつけられて、それからぱたりとベッドに倒れ込んでしまった。

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