雪のとなりに、春。
「……帰って」

「でも」


おでこに手の甲を乗せて、苦しそうに表情を歪めた。


「先輩が、頑張ってるのわかってるから……俺のせいで、先輩の時間を奪いたくない。足かせになりたくないんだよ。……分かるでしょ」


雪杜くんの優しさが伝わってきて、きゅうっと胸が苦しくなる。
こんなにつらそうなのに、私のことを考えてくれるなんて。


「……やだ」

「はあ? 何度言ったらわか……」

「何度言われても帰らないから!! 私が雪杜くんの看病するの!!」

「大声出さないで……頭に響く」

「あう、ごめんなさい……。でも帰らないからね?」


もう何度聞いたか分からないため息が吐かれる。
聞き分けの悪い彼女でごめんなさい。


「……じゃあ」

「?」


するりと伸びて来た手が、私の指に絡むようにして結ばれる。


「よろしく、お願いします」

「っ!!」


普段は完璧でかっこいい大好きな彼氏が。
さっきまで人を救っていた彼氏が。

火照った表情に甘えるような上目遣いで、そんなことを言ってきたら。


「~~~……っ好き……」

「……なんでそうなるわけ」


頑張るしかない!!

看病スタートよ、私!!
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