雪のとなりに、春。
「ゆ、雪杜くん」


手を離された瞬間に名前を呼べば、こてんと首を傾げてくれる。
そんなかわいい仕草に負けそうになりながらも、言葉を続けた。


「私なら大丈夫だよ!! あと環くんの言ってることほとんど嘘だし私全然泣いてないよ!!」

「それは知ってるから大丈夫」


ふんわり笑うのを見て、ほっとして私も笑う。


――……ガチャ


……ん?
今、玄関の方でドアが開けられる音がしたような……?


――ドタドタ……ッ


「な、なんか足音が聞こえる気がするんだけど……っ!?」

「気のせいじゃない、俺にも聞こえる」

「……はあ」


雪杜くんは音の正体が分かっているようで、やれやれというようにそっと立ち上がって廊下へと繋がるドアの方へ足を進めた。


――ドタドタドタッ


「すみません、今話すことになりそうです」


遠い目をしながら雪杜くんはドアノブに手を伸ばして、足音がすぐそこまで迫ってきたというところでドアを引いた。

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