雪のとなりに、春。
スプーンですくったそれに何度も息を吹きかけて、またぱくり。その繰り返し。

ジロジロ見ないでとは言われたけど、やっぱり見ちゃう。

そういえば、雪杜くんのお家に泊まった時、唐揚げを美味しそうに頬張ってるところもじっと見ちゃってたっけ。

自分の作ったものを大好きな人がこうして美味しそうに食べてくれるの、嬉しいな。

……あ、またフーフーしてる。
もしかして猫舌なのかな?


「……だから、あんまりジロジロみないで」

「あは、ごめんね? 嬉しいの」

「……ごちそうさまでした」


1粒残さず綺麗に食べてくれた雪杜くん。

とても今更だけど食欲はあるみたいでよかった。

……もしかして無理して食べてくれたかな!?
本当は食欲なかったけど、私が勝手に作っちゃったから……とか……。

雪杜くんは壁に寄りかかって、小さくため息をつく。
手でお腹をおさえているので余計に不安が募った。

また私は自己満足を押し付けるようなことをしてしまったのかもしれない。


「……変な心配してるならそれは杞憂だよ」

「え…」

「だから、そんなにあからさまに心配するようなことは何もないって言ってるの」


私の心配なんて手に取るようにわかるんだ。

そうだ、この人はいつもそうなんだ。
言葉でも態度でも、こうして私に安心をくれる。

優しい人。


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