雪のとなりに、春。
あれは2人がすごすぎたってこともあるけれど、それにしたって私は見ていることしかできなかった。

目の前の命と向き合って最善の判断、行動をしていた2人は、本当にかっこよかったな……。

対して私は、大好きな人が熱で苦しんでいる時でさえ何も出来ない。

こんなんじゃ、雪杜くんの役に立つこともできない。何もしてあげられない。


「……あ」


ふと、テーブルの上に置かれている袋が目に留まる。
半透明なその袋からは水色の花がうっすら透けて見えていた。

大切な人を想って作った小さな花束。
これを渡して、雪杜くんに感謝の気持ちを伝えようとしていたんだ。

すぐ傍に大量のプリントが置かれてあるのを見つける。


「………これ…」


それは、私のために雪杜くんが用意してくれているプリントだった。

他にも、私の得意不得意それぞれの分野の分析もされている。成績の伸び方をひと目でわかる用にグラフ化されていた。

それも、全部手書きで。


「こんなに、考えてくれてたんだ……」


ただ問題を作ってくれているだけだと思ってた。

あの問題を作る背景に、これだけのことをしてくれていたんだ。
バカな私でも、とてつもない時間が必要なことくらいわかる。

雪杜くんのことだから、中途半端な出来にはしないだろうし……一体どれだけの時間を費やしてくれたんだろう。
加えて皐月さんの嫌がらせも加わったら、体調だって崩すに決まってる。


「……」


そのプリントを手に取り、雪杜くんの部屋に戻った。
ベッドに寄りかかるようにして床に座る。

「えっと、ここの解き方は……」


少しでも勉強して、雪杜くんに追い着かなくちゃ。


プリントに目を通して問題を解いて。
雪杜くんの額に乗せているタオルをチェックして、あたたかくなっていれば冷たい水で固く絞ってまた乗せる。
たまに乾いたタオルで首元の汗を拭いて。
そしてまた、プリントに向き合う。

それをひたすらに繰り返した。


緊急事態が起きたときにすぐに身体が動かない。
好きな人の体調が悪いときに正しい看病の仕方も分からない。

それでも、自分ができることだけはしっかりやらなくちゃ。

……雪杜くんの隣にいたいなら、もっと頑張らなくちゃ。


雪杜くんも私のために頑張ってくれてるんだから!!

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