雪のとなりに、春。
「お、おはようっ!」


こくんと頷いて、また背を向けて口をゆすいだ雪杜くん。
乱暴に口元をタオルで拭きながら、反対の手で眠たそうに目をこすった。


「ゆ、雪杜くん、体調の方はもう大丈夫なの……?」

「熱なら下がったよ」

「本当?」


昨日39度近くあったんじゃなかったっけ……?
すごく辛そうだったのに、1日で回復しちゃうんだ。
雪杜くんって、見た目よりもずっと体力あるんだなあ……。


「うん。37度くらいには」

「まだちょっとあった!! 髪の毛も濡れたままだし、早く乾かさなきゃ!!」

「心配しすぎ、時間経てば乾くでしょ」

「だめー!!」


ドライヤーを手に取り、反対の手で雪杜くんの手首をつかむと、急いでリビングに向かった。
そして、半ば強引にソファーに座ってもらい、私はその後ろにまわって雪杜くんの髪を乾かす。

「今までドライヤーなんて使ったことありませんけど?」みたいな顔してたけど、信じられないくらい髪の毛は傷んでいなくて羨ましくなった。

サラサラの髪の毛に指がすっと通っていく。

シャンプーのいい香りがふわっと広がって、抱きつきたくなる気持ちを必死で抑えた。


「……」


雪杜くんは、抵抗することなくされるがまま大人しくソファーに座っていてくれて。
そのおかげでしっかり髪の毛を乾かすことができた。

勢いのまま行動してしまっていたけど、よく考えたら男の子の髪を乾かしたのはこれが初めてで、今更ドキドキしてしまう。

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