雪のとなりに、春。
「……先輩」

「んっ?」


ドライヤーのコンセントを外していると、ふと声をかけられたので振り返る。
ソファーに座ったままの彼の瞳とぶつかった。


「いろいろ、ありがとう」

「え」

「あんまりよく覚えてないけど、先輩が何度も俺の様子を見てくれたり、タオル変えてくれたりしてたの、なんとなく分かる」


手の甲を額にあてて、天井を見ながら小さく息を吐く雪杜くん。
そんな様子もひどく色っぽくて、どきりとした。


「最近、色々ありすぎて、身体が限界迎えてたんだと思う。迷惑かけてごめんなさい」


奏雨ちゃんのこと。
皐月さんのこと。

私も最初は何が何だか分からなかったけれど、間違いなく雪杜くんの方が大変な思いをしていたはずだ。
それなのに私は、雪杜くんの優しさに甘えるばかりで、何もしてあげられなくて。


「わ、私の方こそごめんね……っ!! 雪杜くんが大変なときに、私……」


うまく言葉が出てこなくてきゅっと唇を結ぶと、雪杜くんはフッと優しく笑った。
それから、「ねえ」と呟きながら足を自分の身体に引き寄せて、ソファーの上で体育座りをする。


「昨日、何してたのか教えてくれないの?」

「昨日……? あっ!?」


やっと思い出した。
昨日、私が雪杜くんの家に来た本当の理由!!

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