雪のとなりに、春。
当然とでも言いたげに微笑んで、「いーち、にーい……」と、わざとらしく花の本数を数える雪杜くん。

本数で花言葉が変わることも知ってるんだ。
私は昨日店員さんに聞いてやっと知ったというのに。

数え終わった後、雪杜くんは「先輩らしいね」と言って小さく笑った。


「あ、う……」


花言葉って本当に本当に、本当に相手に伝わるんだ……っ。

言葉にしていないのに自分の気持ちが全部伝わるのって不思議な感覚。
でも、雪杜くんの反応を見る限り間違いなくちゃんと伝わってる。

やっぱり、不思議。
やっぱり、恥ずかしい。


「色も綺麗。もしかして、タマキ先輩と行ってきた?」

「ち、ちがうよっ。ちゃんと私ひとりで行ってきて、自分で選んだもん!!」


本当は道中色々ありましたけど!!
店員さんには特にお世話になりましたけど!!


「……皐月さんがね、お花屋さんを紹介してくれたの」

「もしかして先輩が昨日言ってた『親切なお兄さん』のこと?」

「うん。道に迷ってたところに偶然会って、案内してくれたんだ」


変に誤解を与えるといけないので、雪杜くんの家にお泊まりした時にさかのぼって皐月さんとのことを話す。

私の話を一通り聞いてくれた雪杜くんは、続けるようにして皐月さんの話をしてくれた。


入学式の2週間前に奏雨ちゃんの姿をした皐月さんが突然押しかけてきたこと。
週末は雪杜くんの家に入り浸っていたこと。
実はこの辺りで雪杜くんの悪い噂を流していたこと。

……小さい頃から皐月さんは、雪杜くんに嫌がらせをしていたこと。


「皐月は俺の嫌がることは何でもするから……だから先輩に話すタイミング伺ってた。話すのが遅れてごめん」

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