雪のとなりに、春。
花束の包みを丁寧に開いて、茎の先端を切りそろえながらそう呟く雪杜くん。


「ううん。私も、知らずに勝手な行動ばっかりしてごめんね?」

「……それに、奏雨のことも。色々驚かせた」


確かに、奏雨ちゃんのことはびっくりしたけど……
結果的に雪杜くんの婚約者だ、と言い張っているのは奏雨ちゃんの格好をした皐月さんだったってことだもんね。

……あとは、昨日雪杜くんが言っていたことが本当なら、不安材料はなくなることになるんだけれど。


「雪杜くん、奏雨ちゃんの好きな人のことなんだけど……」

「ああ、それなら俺じゃないから大丈夫」


花に似合いそうな花瓶を選び、軽く洗いながら淡々と答えた。
あまりにも普通に言われるので、私は首を傾げた。


「大丈夫。今朝スマホ見たらメッセージ来てたし、向こうも順調みたいだよ」

「ええっと……?」


また、私の知らないところで話が進んでいるこの感じに、覚えがありすぎる。

その相手は、もしかして……?


「よし」


ダイニングテーブルの真ん中に花瓶を置いて満足そうに頷いた。
雪杜くんと花の相性が良すぎて、ついついその光景をじーっと見つめてしまう。

かすみ草と、ガーベラの白がなんだか皐月さんを思い出させる。


「……あ!?」


私は、昨日皐月さんに言われた言葉を唐突に思い出して声をあげた。

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