雪のとなりに、春。
ただでさえ人助け精神の塊なんだ。その対象が俺であれば必然的に自分のことなんて忘れてしまうだろう。

この人は、そういう人だ。


「……雪杜くん?」


この感じだと、俺がうつしてしまった訳ではなさそうだ。

多分先輩も疲れが溜まっていたんだろう。


そりゃそうか。慣れない勉強を真面目に頑張っていたわけだし、それが昨日の事故やら俺の看病やらが重なれば。

額に当てていた手を離して、頭にそっと乗せた。

先輩の体調に気付いてあげられなかくて落ち込みそうになるけれど、そんな暇があるなら早くこの人を帰らせて休ませなければ。


「帰ろう。送っていく」

「や、やだよ、もう少し雪杜くんと一緒にいたいよ」

「2人とも体調悪いのに、何言ってるの」

「私は大丈夫だよ!! 今、すごく元気!!」


そんなのテンションが上がってるから当たり前でしょ。
と言いたくなるのを頑張ってこらえた。
さすがの俺にも罪悪感はちゃんとある。


「…………」


先輩は、人の為なら一生懸命頑張れる人だ。

あんなに苦手な勉強に必死になっているのだって、少しでも俺のレベルに近づきたいから。

あまりにも必死に言われるから、そのやる気を削ぐようなことをしたくなくてこっちが折れる形になってしまったのだけれど。

やっぱり先輩はそのままで、入れる大学に入ってもらって。
そこに俺が1年後に入る方がお互いにとっていいんじゃないか。


……熱が上がってきた、と思う。
短絡的な考えになってきたのがその証拠。

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