雪のとなりに、春。
すっかりタマキ先輩に心を許してしまった様子の奏雨を見てほっとする。
この調子なら、きっと花暖先輩とも仲良くなってくれる日も近いんじゃないだろうか。

あたたかいスープを口に含んで、またほっとする。
申し訳ないけど、具はタマキ先輩に食べてもらった。

奏雨がタマキ先輩の家に泊まった経緯について文句を言いながらも説明してくれて、またほっとする。

この、楽しそうな奏雨の表情を皐月に見せつけてやりたい。
そんなことをしたらまた嫌がらせされそうなのでもちろん止めておくんだけれど。

2人が楽しげに話しているのに相づちを打ちつつ、頭の中は明後日の手術のこと。

「夕方に来い」ということは、たぶんオペが終わったあたりを狙っているんだと思う。
父さんは俺に何を見せたいんだろうか。


「……」


食器のすぐ隣に置かれているフラワーアレンジメントに視線が引かれる。

カキツバタと、デルフィニウムが主役になった青主体のアレンジメント。
花暖先輩にしてはすごくまとまっているし、配色も気に入っている。

花言葉も先輩らしいものばかりで見ているだけで優しい気持ちになった。


今頃家でゆっくり休めているといいけれど。

無理させてしまっていたこと、月曜日にまたちゃんと謝ろう。


タマキ先輩が食器を片付けてくれて、それから奏雨と一緒に帰って行った。
「休めよ」と何度も釘を刺されたので、今日は大人しくゆっくり寝ていようと思う。


こんなにしっかりとした食事は、きっと1人でいるうちはとることができないんだろう。


ベッドに倒れ込み、どろりとした睡魔に身を任せたことで、すぐに眠りについた。


花暖先輩が作ってくれた唐揚げ、おいしかったな。


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