雪のとなりに、春。
***

「ユキメ後輩と環が一緒に登校とか、朝から珍しー」


校門で鉢合わせたトーガ先輩は、わざとらしく手を口元に当てて楽しそうに声をかけてきた。
相変わらずボタンは開けていて、だらしなく制服を着こなしている。


「別に。花暖先輩の熱が下がらなくて、たまたま会ったタマキ先輩と来ただけですけど」

「え、やっぱりカノ具合悪かったんだ?」


俺とタマキ先輩は、同時にトーガ先輩の方を向いた。
「うわ!?」なんて情けない声を出されるけれど、気にしない。


「なに、俺なんか変なこと言った?」

「お前なんでカノが調子悪いこと知ってるんだよ」

「そうですよトーガ先輩のくせに」

「俺いつからそういうキャラになったっけ」


トーガ先輩のくせに、はさすがに言い過ぎたかもしれない。
……いや、トーガ先輩だから別にいっか。


「この前の金曜日、カノが家の近くで道に迷ってたから、バス停まで案内したんだよ。なんかその時具合悪そうだったから声かけたんだけど、早くユキメ後輩にプレゼント渡したそうだったし、邪魔すんのも悪いと思ってだな」

「統河もそんなふうに気を使えるようになったんだな、隊長は感動した」

「おい。つーかそのネタいつまで引きずってんだよ」


目頭をおさえて泣き真似をするタマキ先輩に、トーガ先輩が噛みつく。

そっか、トーガ先輩でも気付くくらい、花暖先輩は具合悪かったんだ。
俺、そんなの全然気付かなかった。

うまく2人の会話に入っていけず、先に生徒玄関に向かった。

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