雪のとなりに、春。
「らっラブレターでは!?」

「中見てないから知らないし、大声出さないで」


近くにそれを書いた女子がいたらと思うと気が気でない。

硬直している隙にそれを奪い取って、自分の席についた。
ツヅミも俺の後を追って、前の席に鞄を置く。


「何で奈冷なんだよー、俺のが愛嬌あるだろ!?」

「知らない。そういう内容じゃないかもしれないし、勝手に騒がないで」

「くそ……兄ちゃんが言ってた『廊下で受け身作戦』も効果なしってことかよー……」


ツヅミは、皐月ほどではないが奇行が目立つ奴だ。
俺が彼と知り合ったのも、廊下で突然倒れたところに居合わせて驚いて駆け寄ったのが始まり。
聞けば、女子にモテるために仕方なくうんたらかんたら。

もう関わることはないし関わらないと思っていたのに、学年が上がって同じクラスになって。
席も前後になったしまって、今に至る。


「どうして受け身をとるとモテることに繋がるのか、意味不明」

「いや、まずは興味を持ってもらうところからだろ!! 『この人はどういう人なんだろう?』 『気になる!!』そんな気持ちから恋心っていうのは育っていくんだぜ……」

「……理屈はわかるけど、方法がおかしいでしょ」


ため息交じりに教科書類を鞄から机の中に移動させる。
けど、さっきからずっと注がれているツヅミの視線が気になり、不機嫌を込めて睨んだ。


「なに」

「いや、奈冷変わったよな」

「は?」


イスの背もたれに頬杖をついて、白い歯をニッと出して笑う。

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