雪のとなりに、春。
「いや、前は今よりもっと冷たいというか、何も興味ないです僕~みたいな感じだったじゃん」

「……全然覚えてないし、そんな嫌な奴だった?」

「嫌というか、うーん……人との間に壁があった」

「……」


あながち間違っていないからこそ返答に困る。
ツヅミは人との距離感がバグっているけれど、その分人のことはよく見ている。


「それに、少し悩みも解決したみたいだし?」

「は?」

「この間からずうーっと怖い顔してたから。今日はいくらかマシだし、そりゃあ俺も抱きついちゃうよね。やべ、もしかして小日向先輩に怒られる?」

「いいから前向いて準備でもしなよ。今日は寝てても起こしてやらないから」

「いいし!! 今日こそ起きてるし!!」


口を尖らせながらもやっと背中を向けてくれたので、ふうとため息をつく。

……そうか、思っている以上に顔に出てしまっているのかと口元を押さえた。

視線を落とせば、無造作に机の中にしまったピンクの封筒の端がちらりと見えて、思わず手に取る。
かわいらしい花のシールを優しく剥がして、一枚だけ入っている便せんを取り出した。

開けば、綺麗な文字で俺との出会いや好意をまっすぐに綴られている。
何事にも一生懸命な俺が好きなんだとか。いったい俺の何を見て一生懸命だと感じたんだろう。
今日の放課後に屋上に来て欲しいとの旨も書かれていて、またため息。

明日じゃだめか。今日の昼でもいい。
今日の放課後だけはだめなんだ。

けれど、この手紙を書いてくれた子も相当勇気を出してくれたんだろうし、俺の都合で予定を変えさせていいものなのだろうか。


「…………はあ」

「ため息何回目だよ」


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