雪のとなりに、春。
やっと前を向いてくれていたはずのツヅミが、いつの間にかまたこっちを振り返っている。
その眉間にはしわが寄っているのを見て俺もムッとした。


「別に、ツヅミに関係ない」

「なんか困ったことあるなら言えよー。どうせ今回だってひとりで溜め込みすぎて体調崩したんだろー?」

「…………」


うるさいな、と簡単に言ってしまえたら楽だったけれど。
そうできないのは、ツヅミの言っていることが図星だったから。


「んで、結局どうなん? ラブレターだったん?」

「……放課後の呼び出しだったんだけど、今日の放課後だけはだめなんだ。だから、困ってる」

「なんだ、それなら俺がそう伝えてやるよ。気まずいだろ?」

「俺は別に。でも相手がどうかわからない」


「それと」と、中が見えないように半分に折りたたんだ便せんと封筒をひらひらと見せる。


「送り主の名前がないから、伝えにも行けない」

「マジかよ……聞いてまわるしかないのでは?」

「失礼だろ」

「仕方ないな。放課後、お前の代わりに俺が行ってやるから、お前はその用事とやらを済ませろよ」

「いいのか?」


それはそれで不安なんだけど。
ツヅミは頭がいいくせに、言動は変なことが多いから。


「そんな不安そうな顔するなって」

「……うん、ありがとう。ツヅミ」

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