雪のとなりに、春。
*花暖side*

「……、ふぁあ……」


大きく口を開けてあくびをする。
それから両手をぐーっと上に伸ばして、ごろんとうつ伏せになった。

ふかふかのベッドが気持ちいいけど、少し肌寒くて掛け布団を鼻の上まで引っ張った。
雪杜くんと一緒に寝たらもっとあったかいんだろうなあ……。


「……ん?」


ん!?

ガバッと身体を起こす。
勢いよく起きたせいで一気にこもっていた熱が逃げていっそう寒くなったけれど、それどころじゃない。

ズキズキと軽い頭痛がして、片手でこめかみを抑える。

えっと、私……そう、そうだ。
確か熱が出て、えっと……。 学校も休んだんだっけ……。


――コンコンコン


突然ドアがノックされる音が響いて、驚いて布団をぎゅっと握る。


「カノ、俺。入るぞー」

「た、環くん!?」


まだ「いいよ」なんて言っていないのに、慣れたように部屋に入ってくる幼なじみ。
その手には紙袋。なるほど、お見舞いに来てくれたみたいだ。


「……雪杜くんは一緒じゃないの?」

「お前、人がせっかく見舞いに来てやったのに第一声がそれかよ」

「あう」

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