雪のとなりに、春。
軽くチョップをされるせいで、頭の奥の方がズキンと痛んだ。


「ほら、これ今日のプリントと、乃奈香氏のノートのコピーな。統河のじゃ字が汚いし俺と花壱はそもそもノートとらないから」

「あ、りがとう……」


環くんから受け取ったクリアファイルには、みんなからのメッセージが書かれた付箋も貼られてある。
誰一人心配してる感じはなくて、でもそれがみんならしくてくすりと笑った。


「ねえ環くん、雪杜くんは一緒じゃないの?」

「お前さっきからそれどういうつもりで……って、ん? お前奈冷から話聞いてたんじゃないの?」

「え?」

「え?」


雪杜くんから、話……?

考えても何も思い出せなくて、雪杜くんの看病をしていたときのことから順に記憶を追っていく。

雪杜くんが元気になって、そしたらご両親が突然帰ってきて、お母様と恋バナに花を咲かせて、雪杜くんと二人になって、それからそれから……。

……あ、そうだ。
私も熱が上がっちゃって、そこから記憶がないんだ。

帰ってきてからのことはところどころだけどうっすら覚えている。
確かお母さんが、雪杜くんがここまで私を運んでくれたって言っていたような。

日曜日ゆっくり休めば今日学校に行けると思ってた。

そう。それで、今日雪杜くんと会って、話をしたいと思ってた。


――「やっぱり、やめよう」


なんであんなことを言ったんだろう。
あれはいったいどういう意味だったんだろう。

そう、もっとあの言葉の意味を聞きたかったのに、私はそこで意識を手放した。


「今朝奈冷と偶然一緒になって話聞いたけど、今朝ここに寄ったらしいじゃん。カノ、何も覚えてない?」

「え……」


今朝?
雪杜くんが、ここに……?


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