雪のとなりに、春。
***

……私の、部屋だ。

何度目をこすっても、いつも寝て起きている自分の部屋の光景が広がっている。
もしかして、さっきまで雪杜くんと一緒にいたのは……夢?

少し油断すると、考えるのをやめてぼーっとしてしまいそうになる。

上体を起こして「思い出せ~」と自分に言い聞かせながら頭を振れば、ぐらりと強い眩暈に襲われて、またぼふっとベッドに身体を預けた。


「カノー、入るわよ?」


廊下から聞こえてくるお母さんの声すら頭に響いて、ズキズキと痛む。
雪杜くんと一緒にいて、ご両親に挨拶して、それで……。


「彼氏くん迎えに来たけど……やっぱりまだ無理そうね」


ドアの隙間からのぞき込んでいるお母さんが、そんなことを言っている。
雪杜くんが迎えに……? 何か約束してたかな。どうしよう思い出せない。
そもそも今日が何日で、何曜日なのかすらわからない。


「伝えておくわよー?」

「おか……お母さん」


声を出すだけで頭が痛い。それでも雪杜くんが来てるなら会いたくて、また上体を起こした。
身体のだるさや不快な重さはだいぶ楽になったけど、どうしても頭が痛い。


「少しだけ上がっていってもらう?」

「うー……」


頭が痛くて唸っていると、お母さんと入れ替わるようにして部屋に入ってきた人影。
それはベッドのすぐ近くまで来てくれて、それから膝をついて目線を合わせてくれた。

見間違えるわけがない。
大好きな雪杜くんだった。

< 209 / 246 >

この作品をシェア

pagetop