雪のとなりに、春。
「先輩」

「ゆきもりくん」

「無理させてごめん。今日はゆっくり休んで」


そんな顔しないで。
ううん、私がそんな顔をさせてしまったんだろうな。

雪杜くんは優しいから、私のことを心配してそんなに辛そうな顔をしてくれてるんでしょ?

本当に出会った時と変わったね。
こんなに私のこと心配してくれる日が来るなんて、たまには熱を出してみるのも悪くないかも、なんて。
でも、うん。
めったに体調を崩すなんてことがないから、たまにこうして熱を出すとやっぱりしんどいな。

雪杜くんの言うとおり、今日は大人しく学校を休もう。


「それじゃ、俺行くね」

「あ、待って」


離れてしまう彼の腕をつかもうと手を伸ばしたけれど、思ったより重たくてただ伸ばして終わる。
それでも、もう一度膝を折って首を傾げてくれる雪杜くんは、やっぱり優しい。


「うん?」


なんだろう。
ただ寂しいだけじゃない。

私は今日、あなたと何か話さなきゃいけないことがあったの。
だから昨日はゆっくり休んで、今日絶対学校に行かなくちゃって、思って……。


「っ」


ズキンと目の奥が痛んで、目を閉じる。
はやく思い出さなくちゃ。雪杜くんが学校に行っちゃう。

思い出したところで今の状態で話なんてできるんだろうか。
けど、すごく大事で、大事なこと……。
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