雪のとなりに、春。
「そう」と声をこぼした奏雨ちゃんは、白くて細い指に頬横の髪の毛をくるくると絡ませる。
綺麗に同じ方向に絡まり、指が外されてもすぐに真っ直ぐ落ちる。


「その、奈冷のこと、なんだけど」

「う、ん」


どきっとした。
和解はできたとおもったけれど、いざ奏雨ちゃんから雪杜くんの名前をだされると、やっぱり緊張する。


「わたし、幼い頃奈冷が好きだった。あ、ううん。今は大事な幼なじみよ。安心して」


私の不安を感じとって、すぐに優しく微笑む奏雨ちゃん。
2つも年下の女の子に気を遣わせてしまって申し訳ないなあ。


「冷静で、いつも無表情な彼がその内側で何を思っているのかいつも気になってた。そんな奈冷が夢を語った日があったの」

「……夢……?」


前に、雪杜くんに将来の夢について聞いたことがあったっけ。
でもその時は「特に決まってない」って言われて、安心したのを覚えてる。
私が進路について勝手に悩んで、勝手に焦っていたときだ。


「でもね。今の奈冷は、その夢を自分の奥底にしまい込んでる」

「……え……」

「あなたのせいなんて言うつもりはないわ。だからそんなに泣きそうな顔をしないで。わたしまでつらくなるじゃない」

「ご、ごめんなさい」


奏雨ちゃんはこう言ってくれているけど、半分以上は私のせいなのでは……?

だって、雪杜くんは優しいから。
なんならはじめは私と同じ大学に行くとまで言ってくれていたんだ。
しかもその理由は、少しでも一緒にいられるから。


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