雪のとなりに、春。
「…………」


嬉しい。素直に嬉しかった。

雪杜くんの言葉を思い出して身体の中がずくりと熱くなる。
でも、それと同時にこの優しさに甘えちゃだめだって思った。
だから私は、雪杜くんの身の丈に合うような、少しでもレベルの高い大学に……って思ってたけど。


「……これは、わたしのワガママなんだけれど」


ひんやりとした手が、私の手の上にそっと重ねられる。
すらりと細くて長い指。爪の長さも整えられている。
見れば見るほど奏雨ちゃんという人間の短所があるとは思えない。


「奈冷には、自分の夢を諦めないで欲しいの」

「奏雨ちゃん……」

「奈冷のことだもの、言動ひとつひとつにはきちんと意味も意思もあるって理解しているつもりよ。あなたとのことなら尚更ね」


少しだけ首をかしげてから、フッと愛おしそうに微笑む。


「だからわたしが何を言ったところで、どうせ『俺がしたいから』とかなんとか言って聞く耳も持たないんでしょう」

「……」


そう。
「自分がしたいからする」っていつも言うの。
そうすれば相手が罪悪感を抱かないことを知っているから。

その優しさに、私が何度助けられたことか。


「でもあなたなら本当に奈冷がしたいことをさせてあげられる。違う?」

「……」


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