雪のとなりに、春。
「私、やりたいこと見つけた」

「やりたいこと?」

「違ったら、ごめんなんだけど……雪杜くんも、だよね?」


ぴくりと繋がれた手が震える。
前を向いたままで表情は分からないけれど、多分、合ってる。


「俺、今日思った」

「うん」

「……医者っていうのも、悪くないかもしれないって」


すとんと何かが落ちる。
ほっとしたとか、安心した、っていうのとは違う。

溜めていたもの。

奥に追いやっていたもの。

自分の中で、解決したと思い込んでいたもの。


それらが全部、雪杜くんの言葉で流れるように落ちていった。


「雪杜くんは、やっぱりお医者さんになるべき人だと思うよ」

「……けど、そうしたら先輩は」

「大丈夫だよ、私も追いかけるから」


それまでずっと前を向いていた雪杜くんが「え」と私を見る。
そんなに驚かなくてもいいと思うんですけど……。


「先輩、医大受けるの?」

「まさかっ!! さすがに何年かかっても無理だよっ!!」

「追いかけるって、え……どういう……」

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