雪のとなりに、春。
「つめたっ!! つめたっ!! 何考えてんのお前ら!!」
「は? 親切の間違いだろ? なあ奈冷」
「ほんとですよ。トーガ先輩はもう少し礼儀を重んじる先輩だと思ってたんで、がっかりです」
「え、全国で2位よ? 俺、そのチームのエースよ?」
じりじりと詰め寄る2人から、後ずさる信濃くん。
萌ちゃんと乃奈香ちゃんは微笑んでその光景を見つめていた。
「本当は勝利を喜び合う予定だったけど、仕方ないですよね、タマキ先輩」
「おー、ハッピーシェイカーの異名を持つ俺らからのプレゼントだ、受け取れ統河!!」
雪杜くんと環くんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、缶ジュースをシャカシャカと振る。
え、というかその手にもっているものって、炭酸じゃ……?
信濃くんは「着替えたばっかりなんだって!!」と言って、こちらに背を向けて逃げるように走り出してしまった。
それを雪杜くん達が相変わらず悪い笑顔ですかさず追いかける。
残された私たちは、目の前で繰り広げられる追いかけっこをしばらく眺めていた。
「バカは放っておいて、あっちの日陰で涼もうよ」
「あ、アイス売ってる……」
「でかした池ちゃん。買ってこう」
まだ向こうの方でぎゃあぎゃあと騒ぐ声と、蝉の声。
じんわりと熱を持った空気のおかげで涙はすっかり乾いていた。
無事に買えたアイスの表面は早くも溶け出していて、こぼれ落ちそうになるそれを慌てて舐めとった。
そうしたら反対側も溶け出して危うく手につくところなのを阻止する。
ちらっと隣に視線をうつせば、乃奈香ちゃんや萌ちゃんも同じようにアイスに翻弄されていて、私たちはしばらくアイスと夏と格闘していた。