雪のとなりに、春。
「ちょっとトーガ先輩、こっちに向けないでくださいよバカ!!」


焦ったり、慌てたりした時はつい口調が荒くなっちゃうとか


「ちょ、ユキメ後輩なんでそんな足速いんだよ来んな!!」

「仕返しですよ。大人しく砂糖水でベタベタになってください」


勉強ができるところばかりに意識が行きがちだけど、以外と運動神経がいいとか


「お前それでも後輩か!? それが先輩に対する態度か!?」

「奈冷、やれ」

「了解です」


子どもっぽい一面もあって、夢中ではしゃいでるときの笑顔がかわいいだとか。


最後の一口をごくんと飲み込んで、ふうと息を吐く。

私の好きな人は、意外にも小さい頃から変わってないってことがわかった。

……それでも。


「あ、女子組アイス食ってる」

「炭酸ってこんなにベタベタすんの……? 無理なんだが……?」


私たちが涼んでいることにようやっと気付いた環くん達がこっちに駆け寄ってくる。

この炎天下の中走り回ったおかげで、3人とももれなく汗だくだ。
……信濃くんだけは炭酸ジュースをぶっかけっられたせいで不快そうな顔をしてるけど、他2人は達成感に満ちた表情。


その対照的な表情に、私たちはおかしくてくすくす笑った。


「先輩、そのアイス何味?」

「っ」


膝に手を当ててぐっと屈んだ雪杜くんと、至近距離で目が合う。


上目遣いで、覗き混むようなこの視線には、未だに慣れない。

アイスのおかげで下がった体温は雪杜くんのせいで急上昇。

蝉の声のおかげで激しい心臓の音は聞こえていない……はず。

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