雪のとなりに、春。
あちこち部屋を見て回るのはなんだか申し訳ないので、とりあえず一番お世話になっているリビングへ向かった。

そっと扉を開けて覗き混む。

窓から入り込んでくる外の光がカーテンを通して、うっすら青白い幻想的な空間が広がっていた。


「……あ」


ソファーに仰向けになって眠っている本物……雪杜くんを発見。
かけている毛布が落ちそうになっている。
そっと近づいて、起こさないように気を付けながら肩までかけなおした。


「……」


起きる気配がないので、安心してゆっくりとその場に座った。

もしかして、私に気を遣ってくれたのかな。
私を雪杜くんのベッドに寝かせてくれたのも、自分がこっちで寝ているのも。

もう。

私は全然ソファーでよかったのに。
……というか、一緒に寝たってよかったのに。


「雪杜くん、すき」


サラサラの前髪に触れると、綺麗に整った眉がぴくりと動いた。
あらわになったおでこにそっとキスをする。


「……」


雪杜くんと付き合ってから……ううん、雪杜くんを好きになってから、私は随分と欲張りになった。
それと同時に、わがままにもなった。

あれだけしたいと思っても、いざすると恥ずかしくて体は思うように動かないくせに。
今、もう触れたくてたまらなくなってるんだから。


< 40 / 246 >

この作品をシェア

pagetop