雪のとなりに、春。
「聞いてた通り、底なしのおバカさんのようね」

「え」

「ちょっと、あんたそろそろいい加減に……!!」

「萌ちゃん……っ」


奏雨ちゃんにつかみかかろうとした萌ちゃんを、乃奈香ちゃんが止めに入る。


「小日向花暖。あなたと友達になんてなってあげない」

「奏雨ちゃ……」

「あなたは、わたしから奈冷を奪ったのよ!? そんな人とどうやって仲良くしろって言うのよ!」


ガラス玉が揺れている。


「あなたなんかが奈冷を語らないでよ!! ……っあんたが奈冷の何を知ってるの!!」


その言葉を最後に唇がぎゅうっと強く結ばれた。
言いたいことがたくさんあるけど、口を開いたらきっとこぼれてしまうから。


「……っ」


私。

奏雨ちゃんと仲良くなりたいって勝手に思ってた。

――でも、奏雨ちゃんは?

奏雨ちゃんにとっても、雪杜くんは大切で、大好きな人。
その人が全然知らない人と一緒になってしまったら、悲しいよね。

そしてそれは、私も今までたくさん感じてきたことじゃない。

恋と呼ぶには足りないかも知れないけれど、大切な人を失ったことには変わりない。

その原因に。その根本に。

いきなり「友達になって」と言われた日には、大抵の人が怒りに飲まれてしまうんじゃないだろうか。

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