雪のとなりに、春。
「ご……め……っ」
言葉が出てこない。
これ以上私が何かを言えば言うほど、私はこの子を傷つけてしまう。
「なにー?」
「ケンカか?」
「!」
奏雨ちゃんの強めの声を引き金に、いつの間にか周りに人が集まってきていて若干の騒ぎになりつつあった。
でも、どうしよう……なんて言えば……。
「……もうすぐ予鈴も鳴るし、奏雨ちゃんは一旦教室に戻った方がいいよ」
乃奈香ちゃんが落ち着いた優しい声で奏雨ちゃんに言葉をかける。
奏雨ちゃんの肩が少しだけ動いた。
そしてキッと私を睨んだあと、踵を返して行ってしまった。
「……はなの、大丈夫?」
「……う、ん……」
ああ、すぐ2人に奏雨ちゃんのことについて説明したいのに
頭が奏雨ちゃんからぶつけられた言葉でいっぱいになって、他に何も考えられない。
「カノちゃん……」
2人とも、心配してくれてありがとう。
でも声が出ない。
頑張って口角を上げてから、先に教室に戻った。