雪のとなりに、春。
やっぱり私に魅力がないからなんだろうな、と。
何度思ったかわからない。


学校について、別れ際にもう一度雪杜くんに抱きついてみたけど「ほんっとに、やめて」と怒られてしまった。

ここまでくると、付き合う前の方がたくさん雪杜くんに触れていたしイチャイチャしていたんじゃないかと思えてくる。


「……おはよぉ~……」

「おっはよお!!」


やけに重たく感じる教室の扉を開けながら挨拶すると、聞き慣れた声がすぐに返ってきた。


「はなの~!!」

「カノちゃん、また同じクラスだね~!!」


「はなの」というあだ名で呼んでくるのは、スタイルが良くてオシャレも全力で楽しむ高校生モデル:花壱 萌(はないち もえ)ちゃん。

そして隣にいる丸メガネが特徴の森系ガール:小池 乃奈香(こいけ のなか)ちゃん。


「うう……2人が一緒でよかった……聞いてよ雪杜くんがぁ……」

「はなの。雪杜のことならうちらに聞くより、環に聞いた方がいいんじゃない?」


萌ちゃんが顎をくいっとして教室の奥に座っている人の方へ視線を移した。

茶色く染められた長めの髪の毛が、窓から入ってくる風に揺れている。
そんな彼を見て私は下唇をぐっとかみしめた。

……色相 環(いろあい たまき)くん。
彼は私の幼なじみで、芸術センスに長けているちょっとした有名人だ。

そして、私の彼氏である雪杜くんと「兄弟か!!」っていうくらいに仲がいい。

雪杜くんの口から環くんの名前が出てくる度に嫉妬でおかしくなりそうなのである。

< 5 / 246 >

この作品をシェア

pagetop