雪のとなりに、春。
進路。
卒業。

目を背けていた現実が一気に流れ込んできて、心がさらわれそうになる。


「はなのー」

「カノちゃん、進路希望の用紙書けた?」

「うう……」


私の机の周りに集まってきた萌ちゃんと乃奈香ちゃんは、心なしかすっきりした表情をしている。

ああ、聞かなくてもわかってしまった。
2人も進路については迷うことなく決まっていたみたいだ。

……いや、もっと早い段階で悩んだ結果が今、と言った方がいいのかもしれない。


「いやあ、実はまだ書けてなくて。2人は……?」

「え? 私は進学。多分環くんと同じ大学になると思う」


乃奈香ちゃんの言葉に反応した環くんが、パッと表情を明るくした。


「そっか、小池氏も絵描くの好きだもんな。対策とか色々頑張ろうぜ!」

「う、うん!! 私の方がお世話になること多いかも知れないけど、よろしくね環くん」


乃奈香ちゃんは趣味で絵や漫画をよく描いているから、環くんと同じ大学に行くようだ。
羨ましい、私も同じように絵に興味があったら同じ学校に通えたかも。
今からでも絵の具と向き合ってみるのもアリ……?


「あたしは専門。女優目指してるからね」


萌ちゃんは現役のモデルさん。
最近活躍の幅が増えてきたようで、雑誌の表紙を飾ることも多くなってきた。

今の所属している事務所で頑張りつつ、専門学校に通うことにしたみたいだった。


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