雪のとなりに、春。
自分に声をかけられたとすぐに気付いた奏雨ちゃんが、体勢は変えずに瞳だけを環くんに向ける。


「君、きょうだいいる?」


唐突な質問に、私は首を傾げる。

そして、他愛のない話でこの場を和ませようとしているんだと気付いた。

みんなには昼休みのうちに一連の流れを話しているので、ある程度事情は把握してくれている。


「……お兄ちゃんがいるけど、それが何か?」


答えてくれた!! 奏雨ちゃんには、お兄さんがいる!!


「そうなんだ、いくつ離れてるの?」

「私の2つ上よ。あなた達と同い年ね」


ということは、その人は雪杜くんの従兄ということかな?

どこの高校に通ってるんだろう?

その人は、雪杜くんのことをどう思ってるんだろう。


「まさかユキメ後輩にこんなにかわいい従妹がいたとはなあー」


環くんの意図を察した様子の信濃くんが、お得意の王子様スマイルで奏雨ちゃんに話しかける。
……奏雨ちゃんの眉が若干ぴくりと動いた。


「な、なによ。薄気味悪い顔ね」

「わかる」

「花壱サンまで、ひどすぎない?」


奏雨ちゃんの言葉に即座に反応した萌ちゃんが、見事に信濃くんを貫いた。

ああ、灰になっちゃった……。

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