雪のとなりに、春。
「ねえ、奏雨ちゃんって男の人が苦手なの?」


さっきの環くん達の話を思い出して、おもむろに聞いてみた。

単純にこれまで男子と関わったことがないのか、はたまた男子に対して苦手意識があるのか。
少しでも奏雨ちゃんのことが知りたい。


「苦手……というか、関わり方を知らないんじゃ……」

「お兄さんもいるんでしょ?」

「え……それ、奏雨が話したの?」


こくんと頷くと、「へえ……」と何かを考えるように目を細めた。
さっきまでうっすら赤くなっていた頬の色がいつの間にか元通りになってしまっている。
色白で綺麗なお肌で羨ましい。


「雪杜くんの従兄ってことだよね? 近くの高校なの?」

「いや、総合病院の近く。寮に入ってる」

「そうなんだ……家から遠いんだね。大変そうだなあ」

「家はすぐ近くだけど、おばさんが入れさせたんだ」


おばさん……奏雨ちゃんのお母さんのことだ。
厳しい人なんだろうなというのが伝わってくる。

総合病院ということは、私や雪杜くんの家とは正反対の方向だ。
ちょうど萌ちゃんや乃奈香ちゃん、信濃くんの家が近くにあるのでよく覚えている。

そっか、中学生までは雪杜くんも向こうで過ごしていたんだ。

出会えて良かったと安心して、ぽっとあたたかい気持ちになる。


「2人とも医者になるために頑張ってるよ」


微笑んではいるけど、陰りの残る声。
保健室で雪杜くんが「逃げた」と言っていたのを思い出した。


「雪杜くんの将来の夢ってなに?」
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