雪のとなりに、春。
「俺は、先輩と同じ大学に行くよ」

「……へ……?」


持っていたローファーをボトッと落とす。
不思議そうな顔をした雪杜くんが、私の足下に落としたそれを揃えて置いてくれた。


「先輩? 大丈夫?」


変に心配をさせてしまって、慌てて靴を履き替える。

雪杜くんが、私と同じ大学に。
それって、卒業しても一緒にいられるっていうことだよね?


「……」


私が卒業したら、もう学校で会えない。
今より会える時間が減っちゃう。

用意していた言葉が一瞬でかき消されていく。

数ある選択肢の中から、私と一緒にいられるものを選んでくれた。


「花暖先輩?」


校門から出たあたりで、雪杜くんが私の手を握ってくれる。

何かおかしいこと言った?
そう聞きたそうな表情で首をこてんと傾げる雪杜くん。


「雪杜くん、私と一緒の、大学にって……」

「……そっちの方が一緒にいられる、でしょ」


ちょっと照れて、反対の手の甲で口元を隠す。

もしかして、雪杜くんも私と同じことを考えていてくれたんだろうか。

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