雪のとなりに、春。
……なかなか大胆な行動をしてしまった。

遊びで付き合っている女にキスできるなら、私にもできるでしょう?

一瞬でもそんな思考になった自分が恥ずかしい。
間違いなく今後も思い出しては恥ずかしさで何度も穴に潜りたくなるんだろう。


奈冷に拒まれてしまった時に、全てを理解する。


兄が言っていたことは嘘で
奈冷はやっぱり女と遊ぶような人ではなくて
小日向花暖は奈冷が本気で……それこそあんなことを言うほどに本気で付き合っている女で
わたしは奈冷にとって恋人ではなく、妹のような存在だと。


それでもすがりたくなってしまった。
奈冷の優しさを知っているから、そこにしがみつきたくなった。

妹じゃなくて、1人の女の子として見て欲しかった。

奈冷へ抱く恋心をお母さんは許してはくれなかった。
けれど、諦めきれないわたしの様子を見たお母さんは、提示される条件を満たしていけば許してくれると言ってくれた。

今思えば、あれも兄がなんとかしてくれていたのだろうか。
……いや、そんなわけないか。


「兄が入学した中学で寮生活をすること」


それがお母さんから出された最後の条件。


兄よりも成績が劣っていた私は必死で勉強した。
今奈冷と離れてしまっても、将来的には奈冷と自由に一緒にいられる時間を得られる道を選んだ。

そうやって中学を卒業して、奈冷と同じ高校に入ったのだ。


「……」


どうして信じて疑わなかったんだろう。
奈冷も、わたしと同じ気持ちでいてくれると、どうしてあんなにも信じることができたんだろう。
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