雪のとなりに、春。
「環くん、ここの沖田総司は……」

「あのー小池氏? そろそろ新撰組から離れてもらっても……?」


タマキ先輩の隣にいる小池先輩はいわゆるオタクという種で、特に新撰組が好きらしい。

数学の公式や答えを隙あらば新撰組に置き換えて覚えているようで、去年の勉強会ではその独特な考え方にひどく困惑したっけ。

タマキ先輩と目が合って、お互い口角を上げて笑った。


「お互い大変だな」

「ですね」


放課後はこの4人で勉強するのが日課になりつつある。

花壱先輩は仕事がない日はここに混ざって一緒に勉強をしている。
そういえばあの人も小池先輩と似たような独特な覚え方をしている人だったな。

それと、トーガ先輩はサッカー部の練習。

たまに廊下や教室などで会った時に「勉強進んでますか」と聞けば、「引退したら頑張る」と決まって言う。
子供の「明日やる」みたいな言葉におかしくなって笑えば、言葉で言い返せない人特有の手や足が飛んでくる。

始めは反応できなくて見事にそれらを喰らっていたが、最近ではそれを避けられるようになってきた。

そういう意味では、トーガ先輩には反射神経を鍛えてもらってありがとうございますとお礼を言いたい。

トーガ先輩が苛つきそうな言い方になっているのはもちろんわざとだ。

まあ、仕方ないので大会には応援に行くつもり。

隣へ視線を移す。


「えへへ、満点とかとれたの小学生の体育ぶりだなあ」


この人が応援に行きたいと言うので、仕方なくついて行くだけだ。

ただ、それには問題がひとつある。
……大会が、土日に開催されるということだ。

世間では当たり前なことなんだろうけれど、今の俺にとっては大問題だったりする。

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