雪のとなりに、春。
こうして同じ時間をすごすのなら、君と一緒がいいと思うようになった。

はじめはずっとつきまとわれて、本当に迷惑でしかなかった。
いつの間にかその迷惑を迷惑と思わなくなった。

本当に、君の行動ひとつひとつに対して何度頭を抱えたかわからない。

……奏雨もきっと、知ることができたらいいと願う。
多分それを教えるのは俺じゃないから。


「なんでもない」

「っ!?」


懐かしくなって、愛しくなって。
何度目かもわからない顔の緩みを悟られないように、そっと花暖先輩の額にキスを落とした。


「だ……あ……っ!?」


ゆでだこか、いや、ハバネロか。

顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる先輩からふいっと顔を逸らし、自分の中に沸き上がってくる感情をなんとか押さえ込む。

最近までこの人を大切にしたいという気持ちだけ。それだけだったのに。

先輩が家に泊まりに来たあたりから……あれから明らかに強くなっている欲。

1087、1091、1093、1097、1103……。

そのたびにこうして素数を数えていた。
桁がおかしいことになっているのがその証拠だ。


「んじゃ、2人とも気をつけて帰れよー」


タマキ先輩の声でハッとする。
悶々と素数を数えていた間に、校門まで来ていたようだ。

タマキ先輩は、相変わらず顔の赤い奏雨と、ふんわり笑顔で手を振る小池先輩を引き連れて行ってしまった。

家が逆方向だというのに、あの人は本当に面倒見がいい。

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