月が綺麗ですね。さようなら。
『リュヌ、お前に依頼だ。A社の社長を殺せ。3日以内ならいつでもいい。』
「了解。」
すぐにスーツに着替え、ボブの髪を整える。
普通だったら私と同じ年代の子は高校生活を満喫していることだろう。それなのに私は人を殺すことを生業にしている。私は3年前からこの仕事をしているが、たったの3年で名の知れた殺し屋になれるほどに、殺しの才能があった。まあ、過信に過ぎないけれど。結果的にそうなるほどに任務をやり遂げたのだ。
パソコンの電源を入れ、組織から送られてきたA社の社長、那々瀬社長の資料に目を通す。
社員の給料を無理矢理減らす、B社を裏組織を使って倒産させるなど、いくつもの悪行がならんでいた。
「今日の夜に片付けるか…」
そう思い、時計を見上げる。19時23分。今から準備をして、23時30分から30分以内で片付けるか。そう決めて、銃の手入れをする。表面をクロスで拭い、弾を準備する。
そして22時。社長のお気に入りの秘書、牧野になりすまし、那々瀬社長にメールを送る。
<社長〜♡今日は2人で飲みに行きませんか??海の近くにいい所があって、2人でお話しながら向かいたいので23時30分、海岸で待ってますね♡>
すぐさま既読がつき返信が帰ってくる。本当にお気に入りなんだわ。
<牧野くん!もちろん、23時30分、楽しみにしていてくれたまえ!>
「随分気前がよろしいこと」
まあ、今日で終わりになる。
来るのは牧野じゃなくて私、紅野 月雫、殺し屋のリュヌだけど。
任務は確実に遂行させる。
黒の手袋を着け、ポケットに銃を忍ばせる。
「かっこよく決めなきゃね」
鏡で自分の、姿をよく確認する。
黒のスーツは新品で血の匂いがしない。銃も見えないし、動きやすさもバッチリだ。さすが組織から貰えるスーツ。シャツ内側には薄めでバレにくいがしっかりとした防弾チョッキが仕込まれている。軽い上に高性能。
「うん、最高ね」
満足して時計を見上げれば、もう22時50分だった。私は家の外に出て、夜空に浮かぶ月を見上げ、ふっと微笑んでから、那々瀬社長を殺しに向かった。
人目につかないルートを通り、海岸へ向かっていると、いきなり私狙いの銃撃があった。
とっさに避け後ろを振り返る。
「へぇ、あんたがリュヌ?だいぶ若いね」
そこにはこちらに銃口を向けた、同い年くらいの少年が立っていた。トップの殺し屋を殺してトップになろうとする殺し屋は少なくない。今までもこんなことは何回もあった。だが、今までは全員大人だった。
「その名を知っているということはこちら側なのね」
「ああ、そうさ。どんなやつか気になったんだ。3年で名の知れ渡った謎の殺し屋リュヌが」
彼は私に向けた銃口を下ろし、ふっと笑った。
金髪の短髪に、細身の体。普通に暮らしてたら恐らくだいぶモテただろう。
「まさか俺と同年代の女子なんてな」
「私もあなたみたいな少年に襲われてびっくりしたわよ」
皮肉気味に返すと彼は声を上げて笑った。
「あなた名前は?」
「夜野 星虹」
「…それは本名よね?」
「本名さ。君も本名を教えてくれよ?」
殺し屋名を聞く予定だったが、本名を言ってきたぞ。これ私も本名しか言えなくなるじゃないか。
「…紅野 月雫よ」
私がしぶしぶ言うと星虹は満足そうな顔をして、銃を完全にしまい、友好的な体勢をみせた。
「よろしく、月雫。ちなみに殺し屋名はエトワールだ」
「よろしく、星虹」
そんな会話をしているうちに、時計の針は23時を指していた。
「悪いけど、これから任務なの」
そう言うと星虹は、目を輝かせ、俺も着いてくと言い出した。とりあえず先を急ぎたい私はそれを承諾した。なぜかをたずねると、
「トップのリュヌの殺しを見られることなんてそうそうないぜ?せっかくの出会いだ。見学したくもなる」
らしい。まあ、とりあえず今は任務に集中する。海岸の近くについたのは23時29分、ギリギリだった。社長はもう来ていた。
「星虹、静かにここから見るなら見てて」
「分かった!」
私は少し離れたところに星虹を置いて、ターゲットに近づいた。
那々瀬社長の背中に近づき、声をかける。
「こんばんは。那々瀬社長」
その声に驚き振り返った那々瀬社長と目が合う。お気に入りの秘書の牧野が来ることを期待して待っていたのに現れたのは知らない女で、混乱しているのだろう。
「だ、誰だ君は!?」
驚きで裏返った声でそうたずねられ、私は笑顔でポケットに手を突っ込み、銃を取り出す。
「殺し屋のリュヌです。あなたを殺しに来ました」
そう一息に言い捨て、銃口を社長の頭に押し当てる。
「なっ、や、やめてくれったのむ!」
「さようなら」
バンッ!
震える社長を気にもとめず、引き金を引けば、夜闇に銃声が響き渡った。
辺りにはむせ返るような血の香りが広がり、血の赤色が月明かりに照らされ映えていた。すぐに社長の脈は止まり、死亡が確認できた。私は月を見上げ、
「月が綺麗ですね」
そう残し、星虹のもとへ戻った。
星虹はぼーっと私を眺めていた。
「星虹?大丈夫?」
「さすがトップの殺し屋だ。殺しが美しい…」
星虹は感嘆の声をこぼし、私を賞賛する。
私の殺しは、スムーズで、美しく、星虹の憧れに近いということだった。組織に任務完了の連絡を入れ、とりあえず仕事が片付いた。
「ねぇ、月雫。ペアの殺し屋にならないか?」
そう申し出られ、驚いた私は星虹を見つめた。
「…え?」
「いや、だから!月雫とペアで任務遂行したいって…」
少し赤面した表情でそう言う星虹を見て、私も、ずっと一人でやってきたし、友達とかもいなかったから、星虹と2人で任務をやり遂げるのもいいかもしれないと思った。
「組織に聞いてみるわ」
「ほんとに!?ありがとう!」
そう言って眩しいばかりの笑顔を向ける星虹につられて、私も笑顔になった。
こんなふうに笑ったのはほんとに久しぶりな気がした。今日はすごくいい日になったと思う。
「了解。」
すぐにスーツに着替え、ボブの髪を整える。
普通だったら私と同じ年代の子は高校生活を満喫していることだろう。それなのに私は人を殺すことを生業にしている。私は3年前からこの仕事をしているが、たったの3年で名の知れた殺し屋になれるほどに、殺しの才能があった。まあ、過信に過ぎないけれど。結果的にそうなるほどに任務をやり遂げたのだ。
パソコンの電源を入れ、組織から送られてきたA社の社長、那々瀬社長の資料に目を通す。
社員の給料を無理矢理減らす、B社を裏組織を使って倒産させるなど、いくつもの悪行がならんでいた。
「今日の夜に片付けるか…」
そう思い、時計を見上げる。19時23分。今から準備をして、23時30分から30分以内で片付けるか。そう決めて、銃の手入れをする。表面をクロスで拭い、弾を準備する。
そして22時。社長のお気に入りの秘書、牧野になりすまし、那々瀬社長にメールを送る。
<社長〜♡今日は2人で飲みに行きませんか??海の近くにいい所があって、2人でお話しながら向かいたいので23時30分、海岸で待ってますね♡>
すぐさま既読がつき返信が帰ってくる。本当にお気に入りなんだわ。
<牧野くん!もちろん、23時30分、楽しみにしていてくれたまえ!>
「随分気前がよろしいこと」
まあ、今日で終わりになる。
来るのは牧野じゃなくて私、紅野 月雫、殺し屋のリュヌだけど。
任務は確実に遂行させる。
黒の手袋を着け、ポケットに銃を忍ばせる。
「かっこよく決めなきゃね」
鏡で自分の、姿をよく確認する。
黒のスーツは新品で血の匂いがしない。銃も見えないし、動きやすさもバッチリだ。さすが組織から貰えるスーツ。シャツ内側には薄めでバレにくいがしっかりとした防弾チョッキが仕込まれている。軽い上に高性能。
「うん、最高ね」
満足して時計を見上げれば、もう22時50分だった。私は家の外に出て、夜空に浮かぶ月を見上げ、ふっと微笑んでから、那々瀬社長を殺しに向かった。
人目につかないルートを通り、海岸へ向かっていると、いきなり私狙いの銃撃があった。
とっさに避け後ろを振り返る。
「へぇ、あんたがリュヌ?だいぶ若いね」
そこにはこちらに銃口を向けた、同い年くらいの少年が立っていた。トップの殺し屋を殺してトップになろうとする殺し屋は少なくない。今までもこんなことは何回もあった。だが、今までは全員大人だった。
「その名を知っているということはこちら側なのね」
「ああ、そうさ。どんなやつか気になったんだ。3年で名の知れ渡った謎の殺し屋リュヌが」
彼は私に向けた銃口を下ろし、ふっと笑った。
金髪の短髪に、細身の体。普通に暮らしてたら恐らくだいぶモテただろう。
「まさか俺と同年代の女子なんてな」
「私もあなたみたいな少年に襲われてびっくりしたわよ」
皮肉気味に返すと彼は声を上げて笑った。
「あなた名前は?」
「夜野 星虹」
「…それは本名よね?」
「本名さ。君も本名を教えてくれよ?」
殺し屋名を聞く予定だったが、本名を言ってきたぞ。これ私も本名しか言えなくなるじゃないか。
「…紅野 月雫よ」
私がしぶしぶ言うと星虹は満足そうな顔をして、銃を完全にしまい、友好的な体勢をみせた。
「よろしく、月雫。ちなみに殺し屋名はエトワールだ」
「よろしく、星虹」
そんな会話をしているうちに、時計の針は23時を指していた。
「悪いけど、これから任務なの」
そう言うと星虹は、目を輝かせ、俺も着いてくと言い出した。とりあえず先を急ぎたい私はそれを承諾した。なぜかをたずねると、
「トップのリュヌの殺しを見られることなんてそうそうないぜ?せっかくの出会いだ。見学したくもなる」
らしい。まあ、とりあえず今は任務に集中する。海岸の近くについたのは23時29分、ギリギリだった。社長はもう来ていた。
「星虹、静かにここから見るなら見てて」
「分かった!」
私は少し離れたところに星虹を置いて、ターゲットに近づいた。
那々瀬社長の背中に近づき、声をかける。
「こんばんは。那々瀬社長」
その声に驚き振り返った那々瀬社長と目が合う。お気に入りの秘書の牧野が来ることを期待して待っていたのに現れたのは知らない女で、混乱しているのだろう。
「だ、誰だ君は!?」
驚きで裏返った声でそうたずねられ、私は笑顔でポケットに手を突っ込み、銃を取り出す。
「殺し屋のリュヌです。あなたを殺しに来ました」
そう一息に言い捨て、銃口を社長の頭に押し当てる。
「なっ、や、やめてくれったのむ!」
「さようなら」
バンッ!
震える社長を気にもとめず、引き金を引けば、夜闇に銃声が響き渡った。
辺りにはむせ返るような血の香りが広がり、血の赤色が月明かりに照らされ映えていた。すぐに社長の脈は止まり、死亡が確認できた。私は月を見上げ、
「月が綺麗ですね」
そう残し、星虹のもとへ戻った。
星虹はぼーっと私を眺めていた。
「星虹?大丈夫?」
「さすがトップの殺し屋だ。殺しが美しい…」
星虹は感嘆の声をこぼし、私を賞賛する。
私の殺しは、スムーズで、美しく、星虹の憧れに近いということだった。組織に任務完了の連絡を入れ、とりあえず仕事が片付いた。
「ねぇ、月雫。ペアの殺し屋にならないか?」
そう申し出られ、驚いた私は星虹を見つめた。
「…え?」
「いや、だから!月雫とペアで任務遂行したいって…」
少し赤面した表情でそう言う星虹を見て、私も、ずっと一人でやってきたし、友達とかもいなかったから、星虹と2人で任務をやり遂げるのもいいかもしれないと思った。
「組織に聞いてみるわ」
「ほんとに!?ありがとう!」
そう言って眩しいばかりの笑顔を向ける星虹につられて、私も笑顔になった。
こんなふうに笑ったのはほんとに久しぶりな気がした。今日はすごくいい日になったと思う。