離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
プロローグ

◆プロローグ
          


 新婚生活のために用意された新築のマンションは、天井が高く広々としていた。
 大きな窓から光が差し込み、室内を明るく照らす。

 一歩足を踏み入れた私は、その部屋の豪華さに目を見張った。
 リビングもダイニングも広く、都心の一等地に建っているというのに眺望を遮るものはない。


 家具はすべて質もセンスもいいイタリアブランドでそろえられていて、まるでモデルルームかインテリア雑誌の一ページみたいだ。

 私、一ノ瀬琴子はこれからこの部屋で暮らす。
 私の前を歩くこの男性、上條忍さんの妻として。


 部屋の中を案内してくれる彼を見上げ、こっそりため息をもらした。

 艶のある黒髪に、まっすぐに伸びた綺麗な首。百八十センチ以上ある引き締まった体。
 うしろ姿なのにこんなにも精悍でかっこいい。
    
 私は今日からこの人の妻になるんだ。
 そう思うと胸がドキドキと高鳴った。

「し、忍さん。ふつつか者ですがどうぞよろしくお願いいたします」

 彼の名前を呼ぶだけで、緊張して声が裏返ってしまう。
 私の声を聞いて忍さんがこちらを振り返った。

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