離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 秘書を通してアポをとったところ、料亭やレストランではなく自宅への招待にとても興味を持ち、楽しみにしているとのことだったが。
 
「琴子の負担にならなければいいんだが」と不安をもらす。
 
 夫の仕事相手を自宅に招くなんて、きっと苦痛でしかないだろうな。
 
 しかもイスラム圏は日本とは文化がまったく違う。気を使うことだらけだろう。
 
「そんな心配をしなくても、大丈夫ですよ。琴子さんなら」
 
 暗い顔をしていると、岩木がくすくすと笑った。
 
「前も思ったんだが、岩木と琴子のその信頼の厚さはなんなんだ」
 
 俺の妻のはずなのに、岩木との打ち解けた様子を見せられるのは妙にくやしい。
 
「私は副社長と違って、琴子さんときちんと会話をしていますから」
 
 ふふん、と自慢げに胸を張られさらにむっとした。
 
 俺だって琴子と話をしたい。
 
 もっと顔を見たいし、できるならひたすら甘やかしてかわいがりたい。
 
 けれど、それはすべて俺のひとりよがりな欲望で、琴子にとっては迷惑でしかない。
 
 わかっているから必死に我慢し自重しているというのに。
 
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