離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「週末のホームパーティーの件は、私たち秘書も全力でサポートしますので安心してください」
 
 岩木の言葉に「わかった。よろしく頼む」とうなずく。
 
「それよりも、副社長こそしっかりしてくださいね」
「なにがだ」
「先日、会社にやって来た琴子さんを見て驚きすぎてコーヒーを床にぶちまけて。あんな失態しないでくださいよ」
「それは! 岩木がなんの予告もなく琴子を連れてくるからだろ……!」
 
 ガラス越しに琴子と目が合ったときのことを思い出す。
 
 会議を終え気を抜いたタイミングだったとはいえ、彼女が目の前にいるのが信じられなくてコーヒーを落とし凍りついてしまった。
 
 余裕のない自分が情けない。
 
「でも、久しぶりに会えてうれしかったでしょう?」
 
 にやにやと笑われ、顔をしかめる。
 
「まぁ、それは。……うれしかった」
 
 素直に認めると、岩木は愉快そうに肩を揺らした。
 
 二週間ぶりに会った彼女は、相変わらずかわいらしかった。
 
 内田部長に向かって『主人がいつもお世話になっております』と頭を下げた琴子を見たとき、激しく胸が高鳴った。
 
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