離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 美しい和食はもちろん、豆や香辛料をふんだんに使ったアラビア料理や動物性食品を一切使わないヴィーガン料理もそろっている。
 
 宗教を考慮し、素材はすべてイスラムの戒律にのっとったハラルフード。
 
 そして、それぞれの料理になにが使われているのか、食材から調味料まで細かく明記されている。
 
 リビングのセンターテーブルには花器が置かれ、その前には着物姿の琴子が座っていた。
 
 用意した花を取り、ハサミを入れる。
 
 優雅な手さばきで、見事な生け花ができあがっていく。 
 
 小さな緑の葉が伸びる雪柳に、丸みが愛らしい桃色のピンポン菊。可憐で儚げな薄紫のスターチス。
 
 日本ならではの奥ゆかしさとモダンな雰囲気を感じさせる生け花が完成した。
 
 シンプルなのに立体感があり、角度が変わると花の表情も変わる。
 
 アハメッド氏の妻のナジャーが目を輝かせ、花器に近づく。
 
 いろいろな角度から見て感激の声をもらした。
 
『本当にすてき! 魔法みたいね!』
『ありがとうございます』
『私もやっていいかしら』
『もちろんです。花器も花も用意してありますよ』
 
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