離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 海外からのゲストを招いてホームパーティーなんて大丈夫なんだろうかと心配していたけれど、琴子のもてなしは完璧だった。
 
 着物をプレゼントするくらいなら俺も思いついたかもしれないが、それに合わせたヒジャブまで用意するなんて。彼女の気遣いの細やかさに驚く。
 
 アハメッドが親日家だという話は聞いていたが、それは最愛の妻ナジャーの影響だったらしい。
 
 彼女は幼い頃に日本を訪れ、自国との文化の違いに驚き虜になったそうだ。
 
 琴子はどこからかその情報を手に入れ、アハメッドだけではなくナジャーやルルも楽しめるよう日本文化を体験できる準備をしてくれていたのだ。
 
 自由奔放に花を生けるふたりをほめながら、桃色の着物を着た琴子が柔らかい笑顔を浮かべる。
 
 俺が琴子の可憐さに見とれていると、隣でアハメッドが熱い息を吐き出した。
 
『いやぁ、君の妻の琴子は素晴らしい女性だね。あんなに楽しそうなナジャーとルルを見られて私もうれしいよ』
『ありがとうございます』
 
 アハメッドは綿の白い長衣を身につけていた。
 
 イスラムの伝統的な民族衣装だ。
 
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