離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 そう言って笑い合うと、こつんと額がぶつかった。
 
 そのまま見つめ合い、自然と唇が重なる。
 触れるだけの短いキスが、次第に長くなっていく。
 
 琴子の後頭部を手で包み、自分のほうへと引き寄せた。
 
 キスをしながら柔らかい耳たぶを優しく愛撫すると、琴子の背中がびくんと震えた。
 
「ん……、ふ……」
 
 薄暗い寝室に、甘い吐息が響く。
 
 ゆっくりとキスをほどいて見下ろすと、彼女はすでにとろんとした表情をしていた。
 
 黒い瞳が潤んでいて色っぽい。
 
「琴子はキスが好きだよな」
 
 素直な感想をもらすと、白い頬が膨らんだ。
 
「忍さんがうますぎるんですっ」
「ふーん。それは誰かと比べているのか?」
「え?」
 
 意味がわからず瞬きをする彼女に、意地悪な視線を向ける。
 
「琴子は恋愛慣れしているんだったよな?」
 
 デートのときの会話を持ち出すと、「そ、それは……っ!」と焦った表情になる。
 
「はじめて抱いたとき、自分は恋愛慣れしてて、いつもこうやって遊んでるって言ってただろ」
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